大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(う)464号 判決

このように,重量が1トンを優にこえる自動車で,被害者の轢過を回避しようと思えば容易に回避しえた筈の本件現場において,2回にわたって,被害者の身体の枢要部を轢過したという,被告人の右犯行の態様それ自体からして,車の後方に立っている被害者に気付き乍らその方向に後退をつづけた時点においては,被告人の殺意は優にこれを肯認することができ,しかも,その殺意は未必的なものではなく確定的なものに他ならなかったと認められる……中略……原判示のような強盗傷人の所為に及んだ被告人にしてみれば,被害者を生かしておいたのでは,被害者によっていずれ右犯行が警察に通報されるにいたるであろうことは察知していた筈であるし,被告人が当日被害者を花見に連れてゆくにあたり,妻には出張といつわって外出し,一たん帰宅して再び外出するにあたっても野球の理事会に行く旨妻にいつわっているなど被害者との同行を極力家人に秘匿していたことに照らせば,被告人が被害者さえ殺してしまえば,右強盗傷人の所為が露見することはないと考えたであろうことも容易に推認されるところというべく,したがって,己れの強盗傷人の罪跡の隠蔽こそ被告人があえて自動車により被害者を轢過するに及んだ動機に他ならないと認められるのであり,こうした動機の点からしても,被告人の殺意が未必的なものではありえず,確定的なものであったと認められる。

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